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旧「園芸基礎講座」から

植物と栄養(初〜中級)

このページの内容は、旧「園芸基礎講座」の一部として掲載していたものですが、「園芸基礎講座」の掲載中止に伴い、資料として残すことにしました。
なぜなら、それは、いわゆる「科学」が関与したひとつの軌跡として、また、今後の生き方を探っていくためのひとつの尺度として、今ある「現象」を知り、「限界」を学ぶためにも、大切な内容を含んでいると思われるからです。

植物の体はおよそ60種類の元素からなりたっています。このうち16成分が不可欠の要素で「必須元素」と呼ばれています。これらは、生命維持に必要でありながらも、みずからの体内で合成できないか、生成できても絶対的に不足するために、他からの補給が必要なものです。その意味で「不可欠」または「必須」といいます。

【必須元素】

炭素(C)、酸素(O)、水素(H)、窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、イオウ(S)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ホウ素(B)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、塩素(Cl)  以上16元素

 炭素、酸素、水素は空気や水から供給されます。植物はこれらを原料にして光合成を行い、糖やデンプンなどの炭水化物を合成します。

 窒素、リン酸、カリ(カリウム)は植物の体をつくり、生命活動を行う中心的存在です。またこれらはよく吸収されるために欠乏しがちなので、園芸や農業では人為的に与える必要があります。これを「三要素」といいます。この三要素のいずれか、またはすべてが一定割合以上含まれるものを「肥料」と呼んでいます。

三要素の窒素、リン酸、カリは多量に要求される要素なので「多量要素」といいます。
カルシウム、マグネシウム、イオウは、多量要素ほどではないが、比較的多く必要とするため「中量要素」といいます。
マンガン、ホウ素、亜鉛、銅、モリブデン、塩素などは、必要量はごく微量ですが、植物にとって不可欠のものなので「微量要素」といいます。


肥料


三要素(多量要素)

窒素

 窒素の場合、リン酸やカリ成分より、植物の生育状況が与える量に左右されやすくなります。
 肥料の三要素のうち、リン酸やカリウムは与えすぎても作物の収穫量は落ちず、一般に施肥が多いほど収穫量が上がります。しかし、窒素の場合は、多く与えすぎると植物は多汁化して軟弱となり、地上部の生育が根の生育を上回り、倒れやすくなります。また、病害を受けやすくなります。
 逆に、窒素が欠乏すると、葉は大きくならず、茎は細く、全体に生育が悪くなります。また、光合成による炭水化合物を原料にした窒素の生合成が進まないため、植物の生理現象に影響を与えます。

 窒素肥料の必要性は植物の種類によって多少異なります。マメ科の植物は共生する根粒菌が空中窒素を固定して植物に供給するため窒素肥料はほとんど必要ありません。また、水田では、灌漑水や土壌(圃場の溜水)からの窒素供給が大きく、少なめの施肥でも収穫量にあまり差がありません。また、同じ植物でも、土壌の状態によって、土からの吸収量に差が出ます。

 植物体中の窒素含量は生育初期ほど高く、生育が進むにつれて低下し、炭素との比率によって植物の成熟が決まり、これが開花の誘因となっていきます。
 窒素は植物体中に有機態で存在し、一般に硝酸→アンモニア→アミノ酸→タンパク質の順序で変化しています。タンパク質は細胞原形質の主成分です。また、核酸は酵素とタンパク質によってつくられ、植物体内でのいろいろな生命現象を調節します。また光合成に必要な葉緑素も窒素化合物です。

 土壌中には窒素が0.1~0.6%、平均して0.3%ぐらい含まれています。土壌中の根の生育圏を深さ10cmとすれば、1a(100m2)あたり、平均30kgの窒素が含まれていることになります。実際の植物栽培(生産現場)では、植物に吸収される窒素は1aあたり0.5~1.5kg程度です。しかし、土壌中の窒素の大部分は植物に吸収されにくい形ですから、1aあたりほぼ同量の窒素を与えないと生育が悪くなります。

 植物に吸収されるのは、無機態窒素である硝酸態窒素、または、アンモニア態窒素とされています。有機態窒素は分子量が大きいために植物には吸収されにくいのです。
 土壌中の有機態窒素の半分は一種のタンパク質のようなものであるとされていますが、これは一般のタンパク質とは異なり、微生物にも分解されにくいようです。しかし、有機態窒素は、次のような条件下で無機化しやすくなります。

  1. 乾土
     土壌をそのまま風乾させた後、もとの水分の状態にもどし、保温・放置することで、有機態窒素の一部が分解されてアンモニア態窒素になります。乾土効果によって無機化される窒素の量は「窒素潜在地力」として扱われています。
  2. 温度上昇
     土壌を加温状態で保つと、無機態窒素に分解しやすくなります。
  3. アルカリ化
     湿った土壌のpHを10以上に保つと有機物の一部が土壌微生物に分解されやすくなり、アンモニア態窒素になります。

 これらの諸効果によって無機化される窒素は、天然に供給されうる量とみなすことができます。無機化されたアンモニア態窒素は、畑状態ではかなりすみやかに硝酸態窒素に変化します。これは好気性菌によって起こされる変化で「硝酸化成力」といいます。

 土壌の窒素が減少する原因としては、次のようなことがあげられます。

  1. 溶脱
     降雨や灌水による溶脱。とくに陰イオンの硝酸態窒素はマイナスに帯電している土壌コロイドには吸着されず、溶脱が大きくなります。また、アンモニア態窒素の一部も溶脱します。とくに火山灰土壌は無機窒素の吸着力が弱くなります。
  2. 脱窒
     硝酸態窒素は、条件的嫌気性細菌の作用により、窒素または酸化窒素ガスに還元されて、空気中に放出されます。
  3. 植物による吸収
     無機態窒素は他の養分とともに植物に吸収されます。これを「収奪」といいます。水稲では1作期間に1〜1.5kg/1aの窒素を収奪する。
  4. 土壌侵食
     傾斜地などの土壌侵食で地力窒素が失われる。

逆に、土壌に窒素成分を供給する要因としては次のようにものがあります。

  1. 動植物遺体
     土壌中の有機物は土壌の母材にはなく、動植物、微小生物の遺体により供給されます。植物の根株、茎葉、落葉などタンパク態窒素を含む有機物によって窒素成分が供給されます。人為的には、堆きゅう肥、緑肥などによって有機態窒素が供給されます。
  2. 施肥
     施肥により無機態、有機態窒素が供給されます。一般に作物による吸収量(5〜10?L/10a/1作)程度の量が施用されるのが理想です。しかし集約型の農業や園芸では過剰の窒素が供給される場合が多く、様々な障害の原因となる場合があります。
  3. 空中窒素の固定
     根粒菌などの土壌微生物が空気中の窒素ガスを有機態窒素として固定し、土壌に供給する。
     土壌中での窒素の収支バランスがとれている間は、地力窒素量は一定水準に保たれるのですが、農耕地のように窒素の収奪が大きく、また、有機態窒素がさかんに無機化する条件であるにもかかわらず、堆肥、きゅう肥などによる有機態窒素の供給が十分でないと地力窒素の水準は低下します。
     現代は大気汚染、水質汚濁、降雨、灌水からの窒素供給量が多く、このバランスがくずれやすいのが現状です。

【窒素欠乏の症状】
 葉が小形で、上部の葉が極端に小さくなります。
 下葉から上の葉に向かって黄化していきます。黄化は葉脈間からはじまり、葉全面に進行します。
 果実の場合、着果数が少なくなりますが、比較的早いうちに肥大します。

 窒素欠乏が起こりやすい条件としては、有機資材および窒素施用量が少なく、また土壌中の窒素含有量が低い場合、稲わらや未熟堆肥など、炭素率の高い有機質を多量に土壌施用した場合、降雨が多い時期に窒素の溶脱が起こった場合などに発生しやすくなります。
土質的には、砂土~砂壌土で、粘土のコロイドが少なく、陽イオン交換容量が小さい(窒素の吸着が行われない)場合に発生しやすくなります。

リン酸

 リン酸は窒素、カリウムとともに肥料の三要素であり、与える量はほぼ等しいものです。しかし、リン酸の吸収量は窒素、カリウムの1/5ぐらいです。

 作物体内において、リン酸は、核タンパクや貯蔵物質またはその構成物質、植物にエネルギーを供給するための中間代謝産物(高エネルギーリン酸であるATP等)として存在しています。
 リン酸が欠乏すると、植物は一般に紫がかった青緑色になります。リン酸欠乏土壌では初期の根の伸長にリン酸施用が大きな効果を持っています。

 土壌中のリン酸の含有量はけっして少ないものではありません。火山灰土壌においても0.4~1%の含量、深さ10cm、1aの土壌には40~100kgのリン酸を含んでいます。しかし、有効態リン酸(植物に吸収される有効なリン酸)は、通常10mg/100g以下(畑地などを除く)です(トルオーグ測定法による数値)。つまり、土壌中のリン酸のほとんどは固定された非有効態で、植物には吸収されないものだということです。

 土壌中のリン酸は窒素の場合と同じように無機態リン酸と有機態リン酸に区分されます。表層土壌については、全リン酸に占める有機態リン酸の割合は0.3~95%です。
 植物はリン酸を正リン酸の形で吸収するものとされています。一般に、リン酸は金属と塩をつくっていますが、その吸収しやすい順は

  カルシウム型>アルミニウム型>鉄型>難溶型

となっています。カルシウム型リン酸の含量はほぼトルオーグ法によるリン酸含量と一致しており、これが植物に吸収される有効態リン酸と考えられます。アルミニウム型リン酸はそのままでは吸収されにくいのですが、条件により可溶性となるので、地力リン酸として広い意味の有効態リン酸と考えられています。

 有効な可溶性のリン酸は無機態リン酸の一部ですが、無機態リン酸そのものはほとんどが非有効態です。可溶性リン酸が土壌に加えられるとその大部分は土壌に吸収され、一部が可溶性リン酸のまま残ります。土壌に吸収されたものは一部が交換されて水に溶けますが、それ以外のほとんどは強く吸着されて難溶性になります。この、可溶性リン酸が難溶性に変化することを「リン酸固定」と呼びます。リン酸固定は次のような要因で起こります。

  1. 土壌の酸度。酸性土壌ではリン酸の固定に傾きやすくなります。つまり、可溶性リン酸は鉄、アルミニウムの化合物と反応して、難溶性の塩(えん)となります。土壌酸度が弱酸性〜中性ではこの固定量は小さくなります。つまり、植物の吸収しやすい可溶性リン酸が最大となります。
  2. 活性鉄、アルミニウムの存在。鉄イオンやアルミニウムイオンの多い土壌では、リン酸と結合して難容性の固定リン酸になります。
  3. 鉄、アルミニウムを含む鉱物(とくにアロフェン)。園芸でよく使われる赤玉土はアルミニウムを多く含むので、リン酸が固定されやすくなります。
  4. 石灰および石灰塩。カルシウムイオンが多く存在する場面(アルカリ性土壌)では、炭酸はカルシウムと反応して炭酸カルシウムをつくる傾向となります。つまり、リン酸カルシウムと反応しないため、可溶性のリン酸塩が生成されなくなります。
  5. 有機物の分解過程や土壌微生物の働きで生成される有機態リン酸は難容性です。ただし、窒素の場合と同様、乾土、温度上昇、土壌のアルカリなどによって無機化が促進されます。

 このように、土壌中のリン酸は、難容性のものが多いため、通常、溶脱による損失ははほとんど起こらず、施肥(有効態リン酸の液肥)の時にわずかに起こる程度です。ただし、水田や湿潤な土質では、難容性リン酸の還元化による溶出に伴い、溶脱の起こる場合があります。

【リン酸欠乏の症状】

 比較的若い時期に、下葉が緑紫色になり、しだいに、上位葉に進んでいきます。葉は小形で光沢がなくなり、さらに赤紫色になります。着花数が少なくなります。また、果実は小形で成熟が遅れ、収穫量が低くなります。

 全般に、リン酸の欠乏は生育の初期、また低温期に発生しやすく、生育速度が遅くなり、作物全体が硬化した感じになります。土壌でいえば、火山灰土壌で発生しやすく、pHの低い場合や根張りが不良となる土壌で欠乏しやすくなります。

カ リ

 カリウムは、窒素同様、植物体中における含有量が高い元素です。
 窒素、リン酸が生育初期に吸収されるのに対して、カリウムは生育後期まで吸収されます。カリウムは植物の水分利用や炭水化物合成に果たす役割が大きく、病害に対する植物の抵抗力を増加させます。カリウムが欠乏すると、植物の成熟は遅れ、低温害や病害を受けやすくなります。
 カリウムは窒素やリン酸とは異なり、土壌中には有機態(有機化合物)ではほとんど存在せず、無機態(無機化合物)で存在します。それは水溶性、交換性、非交換性、固定態の4つに区分されます。

 土壌中の水溶性カリウムは、交換性カリウムが少ないため、通常、カルシウムやマグネシウムに比べて濃度が低いものです。
 交換性カリウムは鉱質土壌では全カリウムの1~2%にすぎません。また、交換性カリウムは一般に粘質土壌に多く、砂質土壌では含有量が少ないのが特徴です。
 一次鉱物としてのカリウムは、正長石、微斜長石、黒雲母、白雲母、また、粘土鉱物ではイライトに含まれており、これらを非交換性カリウムといいます。鉱物中の非交換性カリウムはそのままでは植物には吸収されず、土壌中で風化を受け、水溶性または交換性カリウムとなってから植物に吸収されます。

 土壌にバーミキュライトやモンモリロナイトのような膨張格子型の2:1型粘土鉱物が存在する際、カリウムが固定されて、他の陽イオンによって交換されないようになる場合があります。これを固定態カリウムといいます。とくにバーミキュライトで、この結合力は強いものです。固定態カリウムは植物に吸収されません。

 カリウムが欠乏すると、次のような症状が発生します。

  1. 生育の比較的初期に、葉の縁から葉肉部に向かってクロロシス(黄褐色に変化する症状)が発生し、「額縁」状になります。
  2. 生育の最盛期に中位葉付近の葉の先端から褐色に変化し、やがて葉が枯死することもあります。
  3. 葉色が異常に黒ずみ、硬化します。
  4. 果実の場合、肥大が遅れるか不良となり、形もやや角張り、色づきが不均一となります。
  5. 欠乏がはなはだしい場合は、下葉の枯死、落葉が目立つようになります。

 カリウムは土壌侵食、溶脱、植物による吸収(収奪)によって失われます。溶脱は粘土の少ない砂質土壌ほど大きくなります。植物では、多年性牧草や水稲がカリウムの吸収の多い植物です。
 砂土などで土壌のカリ含有量が低い場合は欠乏しやすくなります。
 植物の生育が旺盛で果実の肥大が著しく、吸収量が供給量に追いつかない場合にも欠乏しやすくなります。
 石灰肥料を与え過ぎると、カリの吸収が妨げられます。
 低日照、低温期、地温低下はカリが吸収されにくくなる条件です。
 堆肥など、カリを含む有機資材の施用量が少ない場合に欠乏しやすくなります。


ミネラル類


中量要素

カルシウム

 通常の土壌では、カルシウムは灰長石、斜長石、角せん石、緑簾石などの二次鉱物に含まれているほか、モンモリロナイトなど粘土鉱物中にも多く含まれています。

 カルシウムは窒素、リン酸、カリウムとともに肥料の四要素とも呼ばれることもありますが、三要素とは異なり、必要量を満たすというよりもむしろ土壌の酸度を調節する役割が大きい物質です。このため肥料の三要素に対して「間接肥料」と呼ばれることもあります。

 カルシウムは、植物の細胞分裂組織の生長、特に根の先端や新芽の発育のために不可欠のものであり、欠乏すると植物の生長点に障害が現われます。

 植物が吸収できるカルシウムは、土壌水分中のカルシウム(イオン)と、土壌中の有機および無機コロイドに吸着された交換性カルシウムです。交換性カルシウムは、溶液中のカルシウムイオンが吸収されたときに、平衡状態を保とうとしてイオンになります。

 日本の土壌はおおむね、交換性塩基のうち、カルシウムが60~80%を占めています。この交換性カルシウムが多いほど、土壌の急激な酸性化が食い止められます。これを土壌の「緩衝能」といいます。

 交換性カルシウムはまた、土壌微生物や土壌動物の活動を活発にし、また、土壌の団粒化を進めます。しかし温暖多雨な畑土壌では、カルシウムが土壌の下部へ沈みやすく、このため酸性土壌となり、肥料や微量要素の吸収に悪条件となりがちです。

【カルシウム欠乏の症状】

  1. 植物全体が萎縮します。若い芽が小形になり、黄化します。
  2. 生長点に近い、若い葉の周縁部が褐色となり、一部は枯死します。
  3. 果実の花つきの部分が黒くなります。

 症状は生長点の生育停止により発生することが多くなります。下葉は正常でも上方の葉が異常であったり、葉全体が硬化したりします。トマトなどの果実ではしり腐れ果が発生することがあります。このような場合、根が褐色になることが多く見られます。
 カルシウム欠乏症は、土壌中にカルシウムが不足している場合はもちろん、カルシウムが多くても、塩類濃度が高いとカルシウムが吸収されない状況になるため、発生します。このほか、窒素肥料を過剰に施用した場合、土壌が乾燥した場合、カリ肥料を多用した場合などに現れやすくなります。

マグネシウム

 マグネシウムは葉緑素の構成要素としてすべての緑色植物に必要なもの、すなわち、光受容色素であるクロロフィル(葉緑素)の分子の中心に配位している元素です。
 また、植物体中でのリン酸の移動にも重要な役割を果たしています。
 マグネシウムは輝石、角せん石、黒雲母、かんらん石などの一次鉱物のほかにクロライト、モンモリロナイト、バーミキュライトなどの粘土鉱物に含まれています。
 植物に有効なマグネシウムはおもに置換性(イオン交換を行う性質)のものです。日本の耕地土壌ではカルシウムに次いで多く、塩基量のほぼ10~30%を占めています。
 マグネシウムはカリウムよりやや流失しやすい性質です。
 マグネシウムが欠乏すると、次のような症状が現れます。

  1. 開花初期に、下葉にクロロシスが発生します。
  2. 葉脈間にぼやけた黄化が起こり、徐々に上位葉に及びます。
  3. 生育後期になって全葉が葉脈だけをのこして黄化します。

 一般にクロロシスは下葉から現れますが、トマトなどの果実野菜の場合、肥大最盛期に果実に近い葉に現れます。
 はじめに葉脈間が黄化してくる場合と、黄褐色に変化してくる場合とがあります。
 多くは1枚の葉の中央に近い部分に現れ、徐々に葉全面に広がりますが、ときに葉の縁に緑が残ることもあります。
 クロロシスが進行して、末期には一部ネクロシス(細胞が死んでから現れる褐色斑)が発生します。果実には特に症状は現れませんが、食味に影響を及ぼすこともあります。

 マグネシウムの欠乏は、土壌中のマグネシウム含量が低い、あるいは、十分含まれていても、カリ肥料の多用などにより、吸収が妨げられる場合に起こりやすくなります。また、植物全体のマグネシウム要求量が多く、根からの供給が追いつかない場合にも現れやすくなります。


イオウ

 アミノ酸、タンパク質、ビタミン類の構成元素です。
 イオウが欠乏しても、植物全体の生育にあまり異常は認められないとされていますが、中~上位葉の葉は下位葉よりも色が淡く、はなはだしいときは淡黄色になります。これは、イオウの体内移行性が小さいために起こる現象です。下位葉は健全なのがイオウ欠乏の特徴です。



微量要素

塩素

葉緑体中の光合成に関係があります。欠乏することはほとんどありません。

 鉄は、呼吸や光合成に関与する酵素の成分です。
 鉄は土壌中に多く含まれるのであまり欠乏しませんが、土壌が中性からアルカリ性になると不溶性になって欠乏することがあります。

【鉄欠乏の症状】

 新葉が葉脈を残して黄化し、腋芽にも同じ症状が見られます。土耕栽培では全体に症状が現れることは少ないのですが、養液栽培では中~下位の葉に黄化症状が現れます。
 鉄は体内移行が小さいので、下位葉に現れることはなく、新葉に現れます。
 鉄の欠乏となる条件としては、リン酸が多い土壌で、pHが著しく高い場合、リン酸肥料の過剰施用により鉄の不溶化がすすんだ場合などがあります。また、過乾、過湿、低温などにより根の活力が低下したときにも欠乏が発生しやすくなります

亜鉛

 いくつかの酵素に関与しています。土壌がアルカリ性になると不溶化し、吸収されなくなります。

ホウ素

 細胞分裂、糖の移動、炭水化物の合成に関係します。
 欠乏すると生長点に障害が起き、とくに十字科植物*は心ぐされを起こします。土壌酸性になると不溶化し、植物に吸収されなくなります。

【ホウ素欠乏の症状】

 新葉の生育が停止し、株全体が萎縮、葉の色がやや濃緑色となります。茎は曲がり、曲がった茎の裏側に褐色コルク状のき裂が発生します。また、果実でも表面にコルク状のき裂ができます。
 ホウ素欠乏は、土壌が酸性化によるホウ素の溶脱後に、多量の石灰を施用すると発生しがちです。また、乾燥した土壌で、有機物の施用量が少ない場合も多くなります。カリ肥料を多施用した場合には欠乏症が多発します。

マンガン

 酵索の働きを助け、植物体内での酸化還元反応やタンパク質の合成に関係しています。
 マンガンが不足すると縞状の黄化が発生し、褐色の斑点が生しけます。マンガンは土壌が中性~アルカリ性になったり、極端な乾湿の繰返しによっても不溶化合物となって植物に吸収されなくなり、欠乏を引き起こすことがあります。逆に、土壌酸性化や蒸気消毒などの加熱で有効化し、かえって過剰障害を引き起こすこともあります。全般に、植物体中のマンガン濃度が500~1,000ppmになると障害がみられるようです。

 酸化・還元、光合成に関与します。土壌がアルカリ性になると不溶化しますが、酸性で可溶性となります。土壌汚染防止法では、0.1N塩酸に可溶の銅が125ppm以上存在する場合に汚染土壌となります。

モリブデン

 植物が吸収した硝酸態窒素を還元する酵素の成分として必要です。また根粒菌の働きに関係があります。土壌酸性で不溶性になり、吸収されなくなります。




ビタミン


 ビタミンは1910年代にその存在が知られるようになりました。当初、脂溶性のものをビタミンA、水溶性のものをビタミンBと呼んでいましたが、間もなく、熱に不安定な水溶性ビタミンが発見され、ビタミンCと名づけられました。その後、新たなビタミンが多数発見されました。
 最初は単一の成分であるとみなされていたものでも、実はその多くが数種のビタミンの混合物であることも分かってきました。最近は、「ビタミン○○」のような呼び方ではなく、化合物名で呼ばれることが多いようです。

 ビタミンは生物にとって不可欠の微量有機栄養素です。生物がビタミンをみずから生合成できるか、あるいは、合成不能または不足のために外部から摂取しなければ生きていけないかは、生物の種類によって異なります。例えば、ビタミンCは霊長類にとっては必須ですが、他の多くの動物は体内で合成されるため、必須要素ではありません。

 植物は多くのビタミンを体内で生成するため、欠乏症や過剰症といったものはあまり見られません。むしろ、ビタミンの原料となる他の要素の欠乏などに左右される面が大きく、栽培面においては、他を優先することが多いようです。しかし、特に植物の疲労、樹勢回復に水溶性ビタミンを施用して有効なことがあります。




アミノ酸


 アミノ酸は、タンパク質を構成する最小の単位で、カルボキシル基(-COOH)とアミノ基(-NH2)を持っている物質を言います。タンパク質はおもに20種類のアミノ酸によって構成されています。おおまかには酸性アミノ酸、アルカリ性アミノ酸、そのいずれにも属さないものなどがあります。

 アミノ酸のカルボキシル基と他のアミノ基が結合したものをヘプチドといい、アミノ酸数個~10個程度が結合したものをオリゴペプチド、それより大きいものをポリペプチドと呼んでいます。
 ポリペプチドがさらにつながったものをタンパク質といいますが、両者の境界はあまり明確ではなく、専門的にいうと、分子量10,000あたりを目安に、それより小さいものをポリペプチド、大きいものをタンパク質と呼ぶことが多いようです。アミノ酸は医療などでも不可欠の存在となっており、アミノ酸製剤として広く使用されています。

 動物界では、生命の維持に必要でありながらも他から摂取しなければならない「必須アミノ酸」という概念がありますが、植物はすべてのアミノ酸を体内で合成でき、タンパク質合成のほかビタミンやホルモンとも関わっています。

 窒素の項でも説明しましたが、土壌中のタンパク質は微生物に分解されにくいものであるため、自然の状態では、窒素として吸収されることがあまりありません。しかし、アミノ酸レベルになると植物も吸収可能で、直接、生合成や代謝にはたらき、しかも、窒素肥料のように土壌に負担をかけることがないので、農園芸でも葉面散布などで利用されています。




植物生長ホルモン


 植物ホルモンとは、植物の体内で生産され、他の離れた組織や器官へ移動して、微量で生理的機能・生長過程を調節する有機物質をいいます。植物の生長や開花は植物ホルモンによってコントロールされています。

 天然に存在するものとしては、現在、オーキシン、ジベレリン、サイトカイニン、エチレン、アブシジン酸の5種類が確認されています。

 本来は、植物の体内で生成される有機物質が植物ホルモンですが、これと同様の組成を持ち、類似した作用を持つホルモン様物質は人工的に合成が可能で、農園芸でも製剤として利用されています。製品の流通や生産現場などではこれらの製剤を含めて慣例的に植物ホルモンと呼ぶことも少なくありません。
 植物は、水分、日長、気温変化、体内物質の濃度などを精妙なセンサーで読み取って、植物ホルモン分泌の組合わせと分量を調節しながら生命活動を営んでいると考えられています。農園芸では、逆にそのシステムを利用し、人為的に植物ホルモンを与えることによって、開花、発芽、発根を調節または促進することができるのです。

オーキシン

 植物体内で生成されるオーキシンにはIAA(インドール酢酸)があります。
 オーキシンは、根の重力方向への伸長、細胞の分化や生長(吸水生長)に関与し、発根促進やその伸長、また、茎の伸長や葉の生長という作用をもたらします。また、頂芽優勢(主茎の伸長を促進し、側芽を抑制する作用)や落果の防止にも働きます。
 しかし、さらに作用のレベルが高まると、生長を抑制し、やがて枯れる方向に働くようになります。

 他に、IAAに似た特性をもつ合成物にはNAA(α-ナフタレン酢酸)、IBA(インドール酪酸)、NAAmなどがあります。

サイトカイニン

 細胞分裂にはオーキシンのほかにカイネチンという物質が必要です。カイネチンは、核酸の塩基部分であるアデニンを誘導する物質です。このカイネチンと同じプリン核(=ヌクレオチド*の構成要素である一種の塩基)を持ち、細胞分裂を促進する物質を総称して「サイトカイニン」と呼びます。日本ではベンジルアデニンと製品名フルメットのフォルクロルフェニュロンなどの合成製剤があります。(*ヌクレオチドはDNAを構成する最小単位)
 サイトカイニンの作用は次のようなものです。

  • 細胞分裂の促進
  • カルス形成・組織や器官の分化に強く作用(挿し木、取り木、接ぎ木など手術部への物質の集積)
  • 老化防止
  • 耐寒性をつける
  • 頂芽優勢を崩し、側芽の伸長を促進(=休眠腋芽の萠芽促進)
  • 果実肥大の促進
  • チューリップの促成栽培などにみられるブラインド(蕾の初期に蕾下の分裂部の養水分の不足による枯死現象)の防止

 サイトカイニンはジベレリンとともに作用すると、より薄い濃度でより高い効果がもたらされます。(ジベレリン濃度は単用時の1/2~1/4)。

ジベレリン

ジベレリンは、

  • 種子、芽、ロゼットの休眠打破
  • 好光性種子の暗発芽化(明発芽種子を、暗い条件でも発芽させること)
  • 長日植物の花芽形成促進
  • 単為結果の促進
  • 果実の生長促進
  • 茎葉の生長促進
  • ブラインド(花枯れ)防止

などに作用します。また、花き生産現場では、

  • 交配時の花粉管伸長促進
  • 花間を広げて交配を容易にする
  • 低温感応が不十分で伸長が抑えられている植物の順調な伸長
  • わい化剤により休眠している芽や種子の休眠打破

などに用いられている。

 ジベレリンは、最初、イネのバカナエ病の病原、ジベレ菌から抽出されました。その後、多くの植物から、ジベラ環という化学構造を持つ物質が抽出されるようになり、これらを総称して「ジベレリン」と呼ぶようになりました。これらは発見された順にGA1、GA2、GA3、…と区分されており、現在は約70種のジベレリンが発見されています。一般に製剤として利用されているのはGA3、GA4、GA7ですが、日本ではGA3のみが市販されています。

エチレン

 エチレンは、唯一の気体ホルモンであるため取り扱いにくいものですが、体内のエチレンを増加させる製剤などが利用されています。
 エチレンには、

  • 植物の休眠開始時期に休眠を促し、覚醒時期に目ざめを早める
  • 茎葉伸長のおだやかな抑制
  • 分枝数の増加
  • 花芽分化促進
  • 花や果実の老化、落葉の促進

などの作用があります。

 エチレンがアレロパシー(ある植物の生産物質が、他の植物の発育に影響を与える現象)をおこす物質であることはよく知られています。冷蔵庫でリンゴやバナナと一緒にキウイの果実を入れておくとキウイが熟すのがその一例です。しかし、球根類は休眠が深まって発芽しなくなりまから、冷蔵庫で球根を低温処理する場合などは注意が必要です。カーネーションが花開しない現象やシャコバサボテンの落蕾もエチレンの影響によるといわれています。

アブシジン酸

 ワタの未熟種子から落葉に関与する物質が発見され、これを「アブシジン酸」と呼びました。その後、多くの植物から同一の物質が抽出されましたが、構造的に同じであるため、アブシジン酸という名に統一されました。落葉樹の冬芽の分化はアブシジン酸によってもたらされるとされています。

 アブシジン酸は、

  • 落葉・落果の促進
  • 休眠誘導
  • 側芽生長の抑制
  • 老化の促進
  • 短日植物の花芽形成促進
  • 生長抑制

などの作用をもっています。


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