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11.15 竹の意志
7.8 蝶のいのち
4.13 生命循環
2006
12.17 微生物は自然の強者
12.10 生命の力そして危機
12.4 葉からクローン

ある光景 TOP
微生物は自然の強者
2006.12.17
ガラス容器の中に生活の場を与えられたプテリス*が菌にその場を奪われた。いや、プテリスがその場を譲ったと言うほうが正確かもしれない。奴らは、生物の遺体や排泄物を食べ続けて自然界をきれいにする役割を与えられていたはずだった。だが、この園芸という現場に登場して、生きている植物にも勢力を及ぼし、ついには食べ尽くした。
この植物に特定の病菌ではないようだが、病菌と同じ仕事をしてしまったようだ。カビ(糸状菌)の一種だろう、ある資材をごく微量与えただけでこんな事件になった。山奥にいればよかったものを、人里に出てきてはならない存在だったかもしれない。それをやってしまったのが人間だ。右画像をよく覚えておいていただきたい。特に、ワタのような部分ではなく、粉が吹いたような部分。
シダ類は暖かく多湿の環境を好む。砂と腐植を含む常に潤った土がいいが、水ゴケでも不可能ではない。そこで高さ 30cm ほどのガラスポットの下3分の1に植え付け、湿度を確保した。水はきれいなほうがいい。そこで土と水を浄化すると銘打った微生物資材を導入した。それでもしばらくは生きていた。だが、いきなり異変は起こり、その後はこうなるまでそれほど日数を要しなかった。
異変は他の植物でも起こった。ほったらかしでも簡単には枯れないポトスも、間もなくしおれて枯れた。枯れた後、水ゴケの表面が菌の巣になった。その後、水ゴケはカラカラに乾いたが、菌は繁殖し続けた。この光景からある傾向をつかんだ。この菌は乾燥に強く、空中湿度だけで繁殖する。使ったのが液体資材だった点からすると、無酸素状態では胞子などで休眠し、条件がそろうと活動する。
ハイドロカルチャーでも同じ状況になった。テーブルヤシ(ヤシ科チャメドレア属)を植え、飾りにモスを敷いたものはモスに菌が蔓延した。ヤシは急変しなかったが、きわが黒ずんでいる。これは菌が出す分解酵素よりも熱によるものかもしれない。ヤシ本体はあまり食われていない。このことからこの菌はセルロースなどの高分子多糖類や腐植を好むが、リグニンは分解しにくいと予測できた。
水ゴケやモスに元々付いていた菌かとも疑われた。しかし、ハイドロボールだけの場合でも表面が異常に白くなり、その憶測はすぐに打ち消された。その白いものを洗い出すために水を注ぎ入れると、とたんに菌が表面に浮いてきた。それが右の画像。表面張力で菌は水に浮く。これはかなり重要な意味を持っている。
疫学では病菌の性質や感染源および感染経路が問題になる。キャリアになるものは土、空気(風)、水、動物、ヒトなど様々だ。植物栽培においては中でも水はクセものだ。菌を洗い流そうと水をかけたことによってかえって菌が水に乗り、他の部分に広範囲に広がってしまう場合がある。画像では水際で茎に菌が上ってきていることが分かる。農業生産では深刻な問題に発展することもある。
セントポーリアは多汁質の植物で、乾燥に強くまた繁殖力もあるため、よく葉や茎を挿して繁殖を行う。清潔な環境ではすぐに腐ることもなく、よく発根する。病菌に弱い一面もあるが、挿し芽でいきなり枯れた経験はない。そのセントポーリアの茎挿しが、挿してけっこう経ってからいきなり枯れた。株元には菌が繁殖していた。セントポーリアをよく知る人には異様な光景に映ると思う。
セントポーリアでは、この資材を与えた株はことごとく、株元や葉面にも白いものが付き、葉が展開しなくなり、縮れ始め、生育不良となり、徐々に腐り始めた。疫病の場合は一気に株が溶けるが、萎縮しながらもしばらく生きているのが不気味だ。根を掘り上げると、根と根茎の大半が黒く腐っていた。その葉をバラして撮影した。中心葉ほど白い。
右画像は水をやり忘れて枯らしたポトス。以前から育ててあったもので、途中から1、2回資材を灌水した。これの場合は、水ゴケやモスではなく根に菌が付いている。最後まで水分と養分の多いところに繁殖したと考えられる。それはつまり、この菌は、生物の遺体や排泄物だけでなく、生きた植物にもとり付きやすいことを意味するものではないだろうか。
おそらく、森の奥にあるこの菌の生息エリアは、ある種の植物が生きられない環境にあるだろう。なぜなら、そこは地上の生き物だったものや排泄物が分解され、土やミネラルに還され、浄化される、特殊な場所だからだ。それはひょっとすると、生きた者が踏み入ることのできない聖なるエリアなのかもしれない。
私はあることに思い至り、この菌群を使った他の堆肥資材をそっと開封してみた。思った通りのことが起こっていた。導入当初にはなかった菌が、未熟な木のチップに付いていた(右画像。2005.9.26撮影)。冒頭の画像(2005.9.7撮影)で見たものとよく似ている姿がある。夏の高温多湿期にこの菌は動いた。
未知の世界から未知なるものを持ち帰り、我々の生活に応用していくことは、方法論さえ間違えなければ科学であり知恵であるかもしれない。しかし、手を着けてはならないものも自然界にはあるはずだ。そこに踏み入って荒らすことはもちろん罪だが、それを、リスクに目をつむり、場違いのところに持ち出すことも罪……さもなければ愚行……と言っていいのかもしれない。この菌は我々には強すぎる。
「自然を浄化する」という言葉には、当初思い込みがあったのとは異なった、別の重要な意味があったことにようやく私は気づいた。今回、思いもかけぬ強い菌の生態に出会い、園芸を楽しむために、より強い殺菌剤を使うはめになった。このセントポーリアに付着している白い物質は農薬である。しかし、かえってこれがあだになり、殺菌剤の強さに負けて、このセントポーリアはまもなく死んだ。
マイナスイオンを出すと喧伝されたサンセベリアにも殺菌剤を使った。しかしこの株も間もなく死んだ。ここに取り付いている菌は死滅しただろうか。私には分からない。だが、もう一度実験しろと言われればいくらでもできる。
我々は我々の近くにいる、あるいは生態系のつながっている生物たちと最も密に共生すべきなのだ。彼らは我々人間の持たない能力で我々を助けてくれる。そして、思った以上に強い。

*プテリス: シダ植物イノモトソウ科プテリス属の1品種。プテリス・クレティカ <Pteris cretica> と呼ばれているが、これはシノニム(=同義名、別名)で、正式な学名は Pteris nipponica W. C. Shieh とされている。[Page TOP]

この記事は特定の製品を批判するものではありません。私共で発生した出来事を1事例として紹介したものであり、社会全体に対する問題提起として発表するものです。また、菌資材全般にわたって、照会をくださったご利用者の皆様にも同様の少なくない事例が発生しており、それらが記事の動機になっていることも付記致します。
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